box of chocolates
オープン当日の夜。
閉店後、八潮さんはうちの店に顔を出した。なんとなく、来る予感はしていた。
「八潮くん、開店おめでとう。大盛況だったそうじゃないか」
「おかげさまで。ありがとうございます」
「うちの店が潰されないように、頑張らないと」
「いやいや、まだまだ追いつけませんから」
 閉店後の店内で、話すふたり。掃除を手伝いながら、八潮さんの横顔を盗み見た。通った鼻筋、セクシーな唇。ハンサムという言葉は、彼のためにあるのではないかと思えるほどの人。そんな彼がどうして、私を求めるのか?

『八潮浩輝には気をつけたほうがいい』

兄の言った言葉が、頭をよぎった。気をつけたほうがいいのかもしれない。
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