box of chocolates
 ひとり旅当日は、朝から良い天気だった。でも朝は寒くて、春物のジャケットを羽織った。
「杏ちゃん、これ」
 奥様が、できたてのマカロンを持たせてくれた。
「美味しそう! ありがとうございます」
「楽しんできてね。スリには気をつけて」
「はい。行ってきます」
 ご夫婦の家からルーヴル美術館は、そんなに遠くはなかった。地下鉄にも迷うことなく乗れて、目的地に到着した。そして、お目当てのルーヴル・ピラミッドへ。美術館には朝早くから、たくさんの観光客が。たしかに、ここまで来てモナリザを見ないなんて、もったいない気もするけれど。
美術館前にいるのは、おそらくほとんどがモナリザを見に来た観光客だろう。たまに私のように、美術館前で記念撮影だけして帰る観光客もいるけれど。たくさんの観光客に混じって日本人の団体の姿も目に留まった。それを横目に、私はルーヴル・ピラミッドに近づいた。ピラミッドは、美術館の中央入口となっている。側面は、それを囲むように噴水があった。私は、噴水も含めたピラミッド全体を一周しようと歩き出した。美術館の古い建物と、八十年代にできた新しいピラミッドが見事に融合していて、素敵だなぁと見とれつつ、ふと前を向いた。




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