box of chocolates
 ささやかなパーティーのあと、風呂に入って部屋に戻ると、どっと疲れが出た。さっさとベッドにと思ったけれど、ふと、夜空を見たくなった。
サンタクロースが空を、なんてあるはずはないけれど、そっとカーテンをあけた。すると、黒いベンチコートを着て、頭までばっちりフードで覆われている、男女の判断もつかないような人物が、私の車のまわりをうろついていた。もしかして、車上荒らしかも? 私は、勢いよく部屋を飛び出し、玄関先にあった傘を持ち出して、駐車場に走った。勢い良く駐車場に向かったけれど、そこには誰の姿もなかった。外から車の中を確認しても、荒らされた形跡はなかった。念のため、車をくるりと一周したら、サイドミラーと窓の間に、何かが挟まっているのに気がついた。それは、赤いリボンがついた、小さな包み。私は包みを手に、足早に家へと向かった。

 赤いリボンを外し、小さな包みをあけてみる。中には、キラキラ光る小さな蹄鉄のネックレスが入っていた。私のところに来たサンタクロースは、ずいぶんと怪しい格好をしていたな。しかも、私のところにしかプレゼントを運ばない。名前もメッセージも書いていなかったけれど、どこのサンタクロースがプレゼントしてくれたか、ひと目でわかった。私は早速、ネックレスをつけてみた。蹄鉄のアクセサリーは幸運を呼ぶとか何かの雑誌で見た記憶があった。
「ありがとう」
 鏡の中の私は、自然と笑みがこぼれていた。




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