box of chocolates
 約束通り、ダービー当日は店を臨時休業した。
母は、ピクニック気分で朝から弁当を作っていた。その後ろ姿をぼんやりと眺めながら、カフェオレを口にしていた私。
「お母さん」
「なぁに?」
 おかずを弁当箱に詰めながら返事をする、母。
「ありがと」
「どうしたのよ、急に」
 ふっと鼻で笑いながら、おかずを詰める手を止めた。
「お母さんはいつも、私のことばかり考えてくれているから」
「そう? 家族揃ってお弁当持って出かける機会なんてないから、楽しみにしていただけよ」
 母はさらりと応えると、出来上がったばかりの弁当を満足げに眺めていた。
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