box of chocolates
言われるがまま、されるがままに、私は、身につけていたものをすべて脱ぎ捨てた。はぎ取られた、と言うほうが正しいのかもしれない。繊細な部分を愛撫され、体中が痙攣するかのように震えた。今までに感じたことのない感覚に、シーツをぐっと握りしめた。
「杏は、いやらしい子だね。こんなに、感じて」
 彼は耳元で囁き、わざと音を立てて耳を舐めまわした。
「やっ、やだっ……」
 私がため息に近い声を漏らすと、彼は私の頬に優しく触れた。
「遊びはここまで」

 憧れの男性の手によって、私は、少女から大人の女性になった。その瞬間は、私が思い描いていたような甘く幸せな気分、ではなかった。激しく突き上げられて、痛くて泣き叫んだ。それでも彼は、手を緩めなかった。声をあげ、頭を振って乱れゆく私を見ると、たまらなく感じると言うのだ。そして行為のあとは、何事もなかったかのように服装を整えると、水を飲んでからすぐに駐車場へと向かった。

 車内では、お互いに無言で、あっという間に自宅マンションの駐車場まで戻ってきた。
「ありがとう…ございました…」
 私が俯いたまま小さな声で言うと、彼はそっと手を握った。
「杏、すごく綺麗だったよ」
 私は、無言で八潮さんの元を離れた。
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