box of chocolates
「一旦、休憩にするかな」
「ずっと、クリーム作りを?」
「まぁね。新しいチーズクリームを完成させたくてね。でも、ちょっと行き詰まっている」
 八潮さんは、大きく伸びをしてから、水を飲んだ。私は、思いきって切り出すことにした。
「あの、お話ししたいことがありまして」
「ミーティングで呼んだのだから、遠慮なく」
 八潮さんは椅子に座り、私も向き合って座った。
「私のこと、どう思っていますか?」
 シンプルに、ストレートに聞いた。すると八潮さんは、満面の笑みを浮かべた。
「好きだよ。手放したくない」
「そう言ってもらえるのは、嬉しい。でも、吉川さんにも同じことを言っているんでしょう?」
「もしかして、オレを独占したいの?」
 私の質問はスルーされて、逆に質問された。
「もし、私が『はい』と言えば、独占できるんですか? 吉川さんとの関係を絶ってくれるんですか?」
 こちらもこちらで質問責めだ。八潮さんは返事をせず、真っ直ぐに私を見た。ずるい。その目は。一瞬で、動けなくなってしまうから。
「杏は、オレだけを見て。オレだけを愛して。オレも杏のことが好きだから」
< 39 / 184 >

この作品をシェア

pagetop