box of chocolates
結局、返事は曖昧なまま、私は彼の腕の中にいた。体中を舌で丁寧に愛撫され、夢見心地の中、八潮さんをみつめた。
「八潮さん、さっきの返事を聞かせて下さい」
「返事? 何の?」
「とぼけないで。あっ」
 私の口を封じるかのように、敏感な部分を舌で愛撫された。
「何? 聞こえないなぁ」

 バタン!

頭の中がぼんやりとしている中で聞こえた、大きな音。一瞬、八潮さんの動きが止まった。
「何の音?」
 ドアがバタンと閉まるような音だった。誰かが知らぬ間にそっとドアを開けて、私たちの行為を見て、ドアを閉めたんじゃないかと思った。
「気にするな。杏は、オレだけを見ていればいいんだよ」
「でも」
「言うことを聞かないヤツは、おしおきだ」
 また、続きが始まった。ぼんやりとする頭の中。先のことなんて、何も考えられなかった。





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