box of chocolates
「いらっしゃいませ」
今日はバレンタイン。私は、休みのスタッフに替わり、朝から販売を手伝っていた。
「杏ちゃん!」
 高校時代からの親友である、熊谷優芽がやってきた。優芽ちゃんは、バレンタインや誕生日などのイベント時になると必ずうちの店に買いに来てくれた。私は、笑顔で小さく手を振った。
「えーっと。チョコバナナシフォンと、モンブランと、ガトーショコラをふたつ」
 優芽ちゃんは、ショーケースの前でいろいろ悩んだ末に注文をした。
「あっ、それと。生チョコを……」
 ちょっと照れくさそうに注文するから、すぐに気がついた。
「生チョコは、本命?」
 そう聞くと、優芽ちゃんの顔にボッと火がついた。
「ねぇ、杏ちゃんって月曜日休みだよね? 久しぶりにランチでもしない? 話を聞いてほしいんだ」
「わかった。楽しみにしてるね」
 きっと彼氏ができて、この生チョコは彼氏にあげるんだ。


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