box of chocolates
六月二十六日。私は、二十二回目の誕生日を迎えた。今日は、両親にお願いをして、十六時で仕事を終えた。誕生日プレゼントはいらないから、早退させて下さい、と。そして、十七時に地元の駅前で待っていた。ロータリーに戸田さんの軽自動車が入ってきたから、すぐに駆け寄った。
「こんにちは」
「店は、大丈夫ですか?」
「はい。今日は、一年に一度の、私のワガママが通用する日なんです」
 「そんな日があるんですね」
 それとなく、私の誕生日であることをアピールしてみたが、戸田さんには通じなかった。
「もしかして、誕生日ですか? 今日」
 しばらくの無言の後、戸田さんが思いついたように言った。それも戸田さんらしくて、笑いながら頷いた。
「誕生日に誘ってしまってすみません。何か、川越さんの好きな物を食べに行きましょうか」
「ありがとうございます。戸田さんは良く食べるからバイキングがいいかな?」
「オレのことは気にしないでいいですよ」
 そう言いながら結局、サラダバー食べ放題付きのハンバーグレストランへ向かった。




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