box of chocolates
 約束のコンビニで戸田さんが待っていた。自分から『会いたい』と言ったことが、いまさらながら恥ずかしくて仕方がなかった。戸田さんが私に気付いて声をかけてくれた。彼の大きくて綺麗な目に、惹かれる自分がいた。この人なら、大丈夫かもしれない、私を大切にしてくれるかもしれない。でも、知り合ってまだ四ヶ月ほど。今まで、男性とふたりっきりでまともなデートをしたことがない私は、『男性とデートすることが嬉しい』のか『相手が戸田さんだから嬉しい』のか、わからなくなっていた。函館まで、わざわざ彼を追いかけて『恋人気取りを楽しんでいるだけ』なのかもしれない。考えれば考えるほど、迷路のように迷いこんでいた。

「函館は、初めて?」
 急に話しかけられて、ハッとした。言葉にならず、うんうんと頷いた。
「函館のご当地バーガーを食べに行かない? ここから二十分くらい歩くけれど」
「行きたい!」
 戸田さんとふたり、少しでも長くいたいから。そう思っている私は、やっぱり戸田さんを好きなのだろうか。徒歩二十分も苦にはならない。




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