box of chocolates
ラッキーピエロ
 今夜は、函館競馬場から徒歩で十五分くらいのところにある、湯の川温泉に一泊する。今日の競馬開催が終わるまで戸田さんと連絡が取れないのは、わかっていた。
『少しだけでも会いたい』
 正直な気持ちをメールにこめた。いつ連絡がくるかわからない。もしかしたら連絡をくれないかもしれない。それでも良かった。知らないところでひとりっきり。とりあえず、近くのコンビニに入って飲み物を買った。ぶらぶらと歩きながら、このままホテルに戻ってもいいやと、湯の川温泉の方面を目指した。

 スマホが振動する。それに気付いて、慌てて電話に出た。
『川越さん? 戸田です』
 声を聞いて安心すると、自然と笑みが溢れた。
『メール、ありがとう。八潮さんは、いいの?』
『戸田さんは、どこにいるの? 私がそっちまで行くから』
 聞けば、まだ競馬場近辺にいるようだ。コンビニ前を待ち合わせの場所にすると、元来た道を急いだ。




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