box of chocolates
クリスマスの奇跡
 街はカラフルに彩られ、一年でいちばん綺麗に輝く夜を迎えた。その夜は、ケーキ屋にとっていちばんの書き入れ時。
 
 そう、クリスマスだ。

 友達が誘ってくれたクリスマスパーティーに参加することもなく、私は、実家の手伝いをしていた。
「お疲れ様」
 閉店後、家族三人でささやかなクリスマスパーティーをした。そして、いつもと同じようにお風呂に入り、自分の部屋に戻った。部屋の明かりを点けて、ボンっとベッドに身を投げ出した。天井を見ながら、ぼんやりと考えてみる。学校の友達は、遅くまでパーティーで盛り上がってるのかな? お兄ちゃんは、とわさんと素敵な夜を過ごしているのかな?

 八潮さんは……?

 ベッドから起き、閉まったままのカーテンをそっと開けると、夜空にキラキラと星が瞬いていた。その星を見ながら、またぼんやりとしていた。

……それから、どれくらい経っただろうか。

 一台の車が、マンションの駐車場に停まった。その車に、見覚えがあった。でも、こんな夜遅くにこのマンションに来るだなんて。あ、もしかしたら、このマンションに恋人が住んでいて、会いに来たのかもしれない。最近、うちの店によく来るのは、恋人に会いに来たついで? それにしては、晩ご飯を食べて帰るのは、おかしな話だ。
 駐車場の車を見つめながら、アレコレ考えているうちに、運転席から人が降りてきて、私に手を振った。

 間違いなく八潮さんが、私に手を振った。
 
 それに応じるようにして手を振ると、パジャマの上からコートを羽織り、こっそりと家を飛び出した。
< 8 / 184 >

この作品をシェア

pagetop