box of chocolates
秋の訪れ
 戸田さんと付き合うことにはなったものの、夏の間は函館滞在のため、今までと変わらずメールをするだけで、会うことはなかった。ただ、友達のころと違うのは、私が毎日、メールをするようになったこと。なんにもない一日でも戸田さんに報告するだけで、特別な一日になった気がした。
こうして幸せだけれど、ちょっと寂しい夏が過ぎていった。

 九月最初の日曜日。戸田さんから夏競馬が終わったと報告があった。私は嬉しくて、すぐにメールを返した。
『明日、絶対会おうね』
 相手が八潮さんなら、自分から『会いたい』なんて、絶対に言えない。でも戸田さんなら、どんなワガママでも受け入れてくれるような気がしていた。
『いいよ』
 ほら、やっぱり。戸田さん、疲れてるかもしれないけど。私が会いたくてたまらないから。

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