box of chocolates
「まだ返事は聞かせてもらえない?」
 無理矢理食べて空にした丼に視線を落とした。
「まぁ、仕方ないか。杏は、まだ若いしね。結婚なんて考えられないかな?」
 結婚は、縁のものだと思っていた。縁があれば、若くても結婚するし、無ければ独身でもいい。
今まさに縁がある時なのかもしれない。でも、何か踏み切れなかった。私が連絡をしなければ、連絡をくれなくなった貴大くんに対して不信感を抱いているのは、たしかだ。かといって、別れて八潮さんと付き合うのもどうかと思っていた。
「それとも、やっぱり戸田さんのほうが好き?」
「ごめんなさい。もう少しだけ待って下さい。近いうちに必ず返事をします」
「うん、わかった」
 八潮さんは笑顔でそう言って、席を立った。
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