愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

和弥… 和弥…


あの時、この手紙を読んでいたら、私は間違いなく見送りに行っていたよ。何があっても、熱にうなされてても…行っていた。


悔しいよ…和弥…


「真央!駅に着いたぞ!」

「あっ…」

「先に行け。俺は車を止めてから行く」

「う、うん」


慌てて車から降りる。降りるというよりドレスを抱き抱えて転げ落ちたって感じ…


「走れ!真央!」


龍司の声に背中を押されドレスの裾をたくし上げ走り出す。


和弥…行かないで…私が行くまで、どこにも行かないで…


心の中でそう叫びながら必死で走る。


駅の構内を走り抜けるウエディングドレス姿の私を、すれ違う人々が足を止め驚いた顔をして見つめている。でも、そんな好奇の眼に晒されても全く気にならなかった。だって、この先には、愛しい和弥が居るんだもん。あの笑顔がすぐそこに…


「どいて下さい!お願い、通して…」


新幹線のホームに続くエスカレーターを人をかき分けフラつきながら駆け下り辺りを見渡す。


和弥…どこ?どこに居るの?


新幹線の出発前のホームは多く人でごった返し、和弥がどこに居るのか分からない。


「か…ずや…和弥ー!和弥ー!」


焦った私は堪らず大声を上げていた。その声は叫び声というより、悲鳴に近かったかもしれない。


「かずやぁーー!!」


すると、ホームに溢れていた人達のほぼ全員の視線がこちらに向き、ありえない格好をした私を避ける様に綺麗に左右に別れて行く…


一瞬にして、私の眼の前に一筋の道が開けた。愛しい人に繋がる道が…





「…真央か?」




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