愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

気まずい思いで部長を見ると、意外にも笑っている…


「桜井、お前達の事は全部聞いたよ。仕方ないから真央をお前に返してやる。感謝しろよ!」


真央を、俺に?


「部長…」

「その代わり、何がなんでも絶対に幸せにしろ!真央を泣かせたら、今度こそ会社をクビにするからな!!」


こんな場面を、俺は何度夢に見ただろう…


真央と別れ、そして再会して、二度と俺の手の届かない場所に行ってしまったお前を部長から奪いこの世の果てまで逃げる夢…


でもそれは、所詮夢で現実にはありえない事…一切の希望も見出すことの出来ない無力な俺の妄想なんだと自分に言い聞かせてきた…


「それと、桜井の九州転勤は取り消す。これが新しい辞令だ」


部長から手渡された辞令書には『外食フード部門への移動』と書かれてあった。


「これは…」

「こっちの支社で引き続き勤務だ。さすがに恋敵を側に置いとくほど俺は心が広くないんでね。部署を移動させる。我社の傘下のレストランのメニューを考えたり、一流の食材を調達してくる部門だ。桜井にはピッタリだろ…?」

「部長…本当に、いいんですか…」


部長にここまで言われても、俺はまだ半信半疑だった。


あんなに真央を愛してた部長が…ありえないだろ…?


「お前を九州に転勤させたら、真央も一緒に行くって言うだろうからな…別れても真央は俺の眼の届く場所に置いて、幸せがどうか見届けないと俺の気が済まない」


部長の言葉を聞いた真央が頬を赤らめ俺の腰に手をまわしたまま嬉しそうに俯く。


本当に、信じて…いいのか…?


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