愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
驚きのあまり絶句している俺の眼の前に、真央が一枚の切符をかざし得意げに言う。
「沙紀がね、和弥を宜しくって…この切符くれたんだよ」
それは間違いなく俺が沙紀に渡した切符…沙紀まで…あの、沙紀まで…
その時、新幹線が到着するというアナウンスがホームに流れた。すると真央が急にソワソワしだし辺りを見渡す。
「和弥、お願いがあるんだけど…」
「なんだ?」
「えっとね…200円…貸してくれないかな?」
「…200円?」
訳が分からないまま真央に200円を渡すと「ちょっと待ってて!」そう言って、いきなり駆け出した。
はぁ?売店?
戻って来た真央は胸に何かを抱えモジモジしながら上目遣いで俺を見つめる。
バカ!なんて顔してんだ。俺がテレるだろ!
「これ…」
「ん?」
「今日はバレンタインだから…和弥言ったでしょ。次は手作りじゃなくて買ったやつくれって…だから、こんなので悪いけど…受け取ってほしい…」
板チョコを俺に差し出し真っ赤になってる。
「真央…そんな昔の事、覚えてたのか…」
それは6年前の今日、2月14日バレンタインデー。俺と真央が初めて気持ちを確かめ合い付き合いだした日。お前は、あの頃と同じ恥じらいの表情を浮かべチョコを差し出している。
「…私と…もう一度、付き合って下さい」
呆れるほど真っ直ぐで律儀だよな…でも、真央がこんなに情熱的で内に秘めた想いを貫こうとする激しい女だったなんて、思ってもみなかった…
それは、嬉しい誤算。
全く…お前ってヤツは…
その時、新幹線がホームに滑り込みドアが開いた。