同期が急に変わったら…。〜将生side〜


月曜の朝、

いずみの声。




『将生っ。起きて。』

『ん〜。』

『今日、早いんでしょ?』




ん?

あー、そうだった。

今日、会議だ。

ぼっーとしながら

ベッドから起き上がる。




いずみに起こされる事が

ただ嬉しくて。

いずみに寄りかかるように

朝からぎゅっと抱きしめた。





『朝ごはん、出来てるよ。』

『ああ。』




まだ離したくないんだけど?

腕に力を込めて、

もっと抱きしめた。




ふっと俺の腰にいずみの腕が回り

ぎゅうぎゅうと力がこもる。





『将生、おはよ。』

『おはよう。』

『クスっ。将生、朝から甘いね。』

『嫌か?』

『ううん、嬉しい。』




いずみこそ

朝から俺をグッとさせやがって。






二人で朝食を済ませ

出勤準備をする。




『いずみ、これ鍵。』

『あー、ありがと。今日も遅いの?』

『どうかな?遅いかもな。』

『だよね。夕食作って待ってるね。』

『先に食べててもいいから。』

『………待ってるよ?』

『…そうか?じゃあ、待ってるか?』

『うん。』




どんなに遅くても、

部屋にはいずみが居る。

いずみと飯が食える。





今まで以上に

仕事にやる気が湧く。




俺の最高の栄養剤。

この栄養剤は俺の必需品。

俺は、かなりの重症患者だ。






出勤の支度を済ませて

毎日通い慣れた最寄りの駅まで

いずみと歩く。




『道、大丈夫か?』

『うん、大丈夫。』

『俺が先に行く日もあるから、
覚えとけよ。』

『大丈夫だよ。』





電車には一緒に乗ったが、

会社の近くの駅を出たら、

いずみは立ち止まり、




『将生、先に行って。』

『どうした?』

『ここ寄ってくから。』




と、コーヒーショップを指差した。




今日は俺に合わせて

二人で早く出てきたために、

いずみはコーヒーショップで

時間潰しをするらしい。




『そうか。じゃあ、先行くよ。』

『うん、じゃあね。』

『ごめんな。』

『なんで?悪くないよ?』

『お前さ。
………いや、いいわ。じゃあな。』






いずみは、ほとんど我儘を言わない。

会社まで一緒に行きたいとか、

俺を困らせるような事は

まず言わない。





だからこそ、

今日は、

一緒に出勤してやるつもりだった。




何か言われたら、

俺が引き受けてやる。




と、考えていたが、

いずみはそんなヤツじゃなかった。

課長の俺を気遣っている。





……ほんとバカなヤツ。








明日は一緒に出勤しよう。





急いで会社に向かっていたら、

後ろから声をかけられた。




『藤森、おはよう。』




営業部長だ。




『おはようございます。』

『桐谷の件、延期になったらしいな。』

『はい。
今日報告しようと思ってました。』

『そうか。
夏木くんからだいたいは聞いたぞ。』

『そうでしたか。
引き継ぎも含めて、
もう少し時間を頂きました。』

『そうだな。
引き継ぎは確かに必要だな。
新しい人材はどうする?』

『早めに一人欲しいですね。』

『そうか。
じゃあ今日の会議で話してみろ。』

『わかりました。』

『俺も言ってやるから。』

『はい、お願いします。』






部長とは

そのまま会議室まで一緒に出勤した。




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