同期が急に変わったら…。〜将生side〜


金曜日。



朝の喫煙所で

仕事の事を考えていた。




今日は、東亜の商談が入っている。

かなり、大きな契約だ。



最終の詰めの前に

少し和みを入れるか。



いずみを同行させよう。



タバコをもみ消し

おれは、オフィスに向かった。






ザワザワとしたオフィス。

朝の挨拶をしながら

デスクに向かう。



『桐谷。』

『はい。』





オフィスでは、いずみを桐谷と呼ぶ。

この営業1課に異動してきた時から、

そう決めている。





職場とプライベートは

切り替える。





今日は、

朝イチでいずみを呼んだ。



厚めのファイルを

いずみに差し出して、


『今日、午後から東亜行くから。
桐谷も準備しとけよ。』

『東亜ですか?』

『ああ。』

『わかりました。』



いずみは、

嫌な顔をせず

にっこり笑顔で返事をする。



いつもオフィスで見ているいずみ。

にっこり笑うと

綺麗な顔が可愛くなる。



この笑顔が、

どこかの社長のものに?



渡すかよ。






デスクに戻るいずみの姿を

目で追いながら

朝から、

そんな感情を抱いていた。





さ、仕事するか。








午後。




『桐谷、行くぞ。』



東亜の商談に行く為に

いずみに声を掛けて、

俺は先にエレベーターに向かった。



後から、

慌てて小走りして近づいてくる

いずみの靴の音。



俺の少し後ろで止まった。



いずみは、

何も言わずに

俺から一歩下がって

エレベーターを待つ。




プライベートでは、

将生、とか、あんた、とか、

まあ、遠慮もくそもないくせに。



そう思っていたら、

やけに可笑しくなって

いずみを背に

俺の顔は微かに笑っていた。




< 15 / 163 >

この作品をシェア

pagetop