同期が急に変わったら…。〜将生side〜



やっと俺の目を見たいずみを

横からそっと抱きしめたら

小さく震えていた。




『どうした?』




首を傾けて

いずみの顔を覗き込んだら、

声も出さずに泣いていた。




……マジか。





『いずみ……。ごめん。』

『うっ。』

『ほんとゴメン。』

『ううっ。』




静かにいずみの頬に流れる涙。



急に罪悪感に襲われた。




………。




『俺さ、軽く考えてたんだな。
ほんとに会ったのは偶然だったし、
あいつになんの感情もなかったから。
いずみを泣かせるなんて、
思ってもなくて…。』

『うっ。……。』

『いずみ。』

『……。』

『いずみ。悪かった。』

『……うん。』




いずみをぎゅっと抱きしめて、

頭を優しく撫でた。




いずみ、ほんとにゴメン。




まさか、

いずみがこんな事で泣くとは

想像もしてなかった。





そんな女じゃないと思ってた。

もっと強いと思ってた。

逆に、

ちょっとあんたっ、

くらいに怒るヤツかと思ってた。





そうじゃなかった。

不安だったんだよな?

俺が軽率だった。





憎まれ口は叩くくせに、

大事な事は

素直に言おうとしない。

父親の言う通り、

不器用なんだな。





ほんと、世話の焼けるヤツ。

それでも、

いずみが可愛くてたまらない。





いずみが可愛くて、

そんな事で弱くなるいずみが

ただ愛しくて。





『いずみ、こっちこい。』





隣のいずみを

無理やり俺の太腿の上に座らせたら、

すぐに俺に抱きついてきた。




………。





『将生ぃ。ごめん。』

『なんだ?なんで謝る?』

『信じられなくて、ごめんなさい。』

『いや。俺が悪かった。ごめんな。』

『ううっ。』





いずみ……。





いずみが落ち着くまで

強く抱きしめていた。

優しく背中をさすりながら。




いずみの頬の涙を手で拭い

そのまま優しくキスをして。




いずみは俺に強く抱きついて、

しがみついて離れない。





俺の心は、

ぎゅーっと締め付けられた。






気が狂うほどいずみを愛してるのに

いずみに涙を流させた。





情けねえな。





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