同期が急に変わったら…。〜将生side〜



そんな、エピソードも含め、

いずみと同じオフィスで

働くようになってからは、

知らなかったいずみの姿を

時折、目にするようになった。






後輩達には、

声を掛けて笑わせたり、

話を聞いてあげている様子を

よく見かけた。






信頼されているんだと、

嫌でも理解できた。







俺にとっては、

男友達のような存在だったいずみ。






こいつを少しずつ女として

見るようになっていた。






だからと言って、

それが恋愛感情かと言われたら。

まあ、そこにはあまり触れたくない。








そして、それは、今も同じで。







だから、

俺達の友人関係は、

何も変わっていない。

いや、

変えられなかった。





なぜなら、

俺は、いずみとの今のこの関係が、

心地いい。





いずみとは、

友人として、

終わりなく付き合える

今の関係が丁度いいんだろうと

思っているから。






いずみのそばで

今の関係を維持できればいい。







もう少し、このままで。







俺はいずみの上司。

しかも、

課長として軌道に乗ってきたところ。

やらなければならない事が、

山程ある。






女にハマってる時じゃない。






………そう思っている。







だから、

今日もコーヒーを飲んで一服したら

いつものように自宅に帰る。






『ごちそうさん。帰るよ。』

『そう。気を付けてね。』

『ああ。じゃあな。』

『うん。ありがとね。』






いずみは、にっこりと笑って、

右手を振っている。






なんでもない、いつもの仕草。






久しぶりに

いずみのマンションの玄関で

俺を見送るいずみの笑顔。







その笑顔にグッときた。

手を振る、その腕を引き寄せて

抱きしめたい、そう思った。








………。







そんな自分の欲望は

すぐに胸にしまい込んだ。







いずみのマンションを後にして

大通りに出てタクシーを拾い、

自分のマンションに帰った。







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