同期が急に変わったら…。〜将生side〜



『おはよう。』





朝の挨拶をしながら、

オフィスに入って行くと

部下たちが振り返り、

待ってました、と言わんばかりに

次から次へと書類を提出していく。






いずみも同様に東亜の報告に来た。




夕べ、全部聞いた内容。

それも、かなり詳しく。




報告書を見せるように、と、

上司として答える。





いずみがニコっと笑うから、

つい顔がニヤけそうになる。



ヤバい。





仕事に集中集中!






今日は、午前中に会議が入っている。

会議の時間まで、

少しでも仕事を片付けたい。




が。

パソコンを見ながら、

キーボードを叩いていたら、

いずみの笑い声が耳に入ってきた。





パソコンの画面から

いずみの方へ視線を移すと、

笑いながら宮野と手を握っていた。

楽しそうに話しながら。





あいつら何やってんだ。

手、離せ。

すっげームカつく。





……手なんか握らせんな。





異常にイラつく思いを抱えたまま

会議室に向かった。








会議は長くなり、

午前中は会議室から出られなかった。




ただでさえイラついていたのに

長引く会議にも、更にイラついた。






午後からも、

山積みの仕事を黙々と片付け。




さすがに、この量は追いつかない。

東亜の書類、いずみにさせるか。





『桐谷。』





いずみを呼び、

東亜の書類を仕上げるように指示した。

いつもの笑顔で返事をするいずみ。






凛としている。





胸がドクンとして、

目が離せなくなり

いずみの瞳を見つめ

少しだけ笑って見せた。






仕事中に俺を狂わせんな。






だから、…仕事だ、仕事。






ひたすら仕事を続けていたら、

定時近くになり、

隆也が営業1課にやって来た。





隆也は、

いずみとアイコンタクトをとりながら

まっすぐに俺のデスクに来た。





やはり隆也は三鷹を担当するらしく、

俺に協力を頼みに来たらしい。





まあ、俺が取ってきた仕事だ。

マーケティングは、元々俺が居た部署。

仕事の内容は把握している。





少しだけ協力してやるか。





打ち込んでいた仕事を切り上げ、

隆也の待つ喫煙所へ向かった。







それからは、

マーケのオフィスでの作業になった。





9時を過ぎて、



『将生、悪かったな。
後は、だいたい出来そうだよ。』

『そうか。また来るから。』

『ああ。頼むよ。』

『じゃあ、俺、戻るからな。』

『あ、コーヒー奢る。一服行こうぜ。』







喫煙所で隆也と二人。





これを聞くのは癪に障るが、

気になるから仕方ない。




例の社長の件だ。





『いずみのアレ、どうした?』

『アレ?アレってなんだよ?』

『……。』

『社長か?』

『ああ。』

『ハハっ。まだ、連絡取ってない。』

『いずみに紹介すんのやめろ。』

『ほー。なんでだよ?』

『なんででも。とにかくやめとけ。』

『ハハハっ。考えとくよ。』






笑いやがって。

……またムカついてきた。





いったい今日はなんなんだ。





まあ、

でもまだ話は進んでないみたいだな。



ホッと一安心。





営業1課のオフィスに戻ると、

数名の社員が残業していた。





『お疲れさん。
そろそろやめて帰れよ。週末だぞ。』

『『はいっ。』』





デスクの上には、東亜の書類。

いずみのメモが添えてあった。





書類をパラパラとめくって確認する。

完璧だ。

いずみに任せて良かった。





小さなメモには、業務的な挨拶のみ。





いずみらしい。

ふと、笑みが零れた。





『課長?珍しいっすね?』

『なんだ?』





残業していた小泉に見られた。

………。





『いえ。
課長が優しく笑うの、貴重なんで。』

『人を鬼みたいに言うなよ。』

『あー、そういうつもりでは……。』

『終わったのか?』

『はい。もう帰ります。』

『そうか、お疲れさん。』

『課長。』

『なんだ?』

『いえ、今度飲みに行きましょう。』

『なんだ突然。ああ、今度な。』

『はい。では、失礼します。』





なんだ?





そういえば、

最近は営業1課で飲み会もしてないな。

もう少し落ち着いたら、だな。






さー、俺も帰るか。



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