同期が急に変わったら…。〜将生side〜



会議室に入ると

いずみが不安そうな顔で俺を見る。






いずみは椅子にも座らず、

ただそこに立っていた。







……そんな顔すんな。






いずみをこんなに不安にさせて、

俺は何やってんだ。





『悪い。待たせたな。』

『いえ。』





ガチャリ。






俺は会議室のドアの鍵を閉めた。






『いずみ。』





いずみを俺の腕の中に

抱き寄せて、包み込んだ。







『どうしたの?』

『いずみ。』

『うん。』

『くそっ。』





いずみを抱きしめる腕に力を込めて、

俺の頬に触れているいずみの髪に

優しくキスをした。






いずみの首筋に顔を埋めて

自分を落ち着かせていた。






『ねえ、どうしたのよ?』

『ああ。』





抱きしめていた腕を離し、

椅子に座るようにと促す。






横並びに置かれた椅子を、

少し斜めに引いて、

いずみの顔が見えるように座った。






『企画がいずみを引き抜くそうだ。』

『えっ?』





いずみの身体が

ビクンと動いたのがわかった。





『前に言っただろ?
企画が欲しがってるって。』

『うん。でも……。』





明らかに戸惑っているいずみ。

営業が好きだって言ってたもんな。






俺は、いずみの目を真っ直ぐに見て

これまでの経緯と俺の考えを話した。





そして、こうなったのも

俺の力不足だと謝った。






いずみは、

何度も首を横に振った。





『俺は諦めないから。』

『うん。』

『まあ、夫婦になったら
同じ課にはいれないけどな。』

『えっ?』






そんなに驚くなよ。

さっきも言っただろ?

おまえを貰うって。






『いずれはな。』

『……うん。』





いずみの表情が緩んできたな。






いずみは笑顔がいいんだ。

いつも笑ってろ。






『いずみ。』

『はい。』

『心配すんな。』






そう言って、

いずみの頭を優しく撫でた。





『ありがと。』

『いいえ。』





いずみを見つめて、笑ってみせた。

こいつも笑ってくれるように。





『じゃあ、戻るか。』

『うん。』

『あー、宮野にだけは、
話しておくからな。』

『うん。
将生。私、企画行かないから。』

『おう。行かせるかよ。』






行かせない。

俺のそばから離すかよ。






いずみを先にオフィスに戻して、

俺は喫煙所に寄った。






タバコを吸いながら、

仕事の段取り、いずみの企画の件を

黙って考えていた。







が、マズい。

ゆっくりしてる場合じゃなかった。

仕事がたっぷりあるんだった。

俺は、もう一本タバコを吸ってから

急いでオフィスに戻った。






そして、

まずは宮野を会議室に呼び出した。



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