同期が急に変わったら…。〜将生side〜



『宮野。急に悪かったな。』

『いえ。桐谷さんの事ですね?』

『ああ。』

『何があったんですか?』






宮野に事情を説明すると、

宮野は眉間に皺を寄せた。






『なんなんですか、急に。
しかも、こんな時期に。』


『ほんとだよな。』


『今、桐谷さんに抜けられたら
俺、真面目にキツイですよ。』


『そうだな。
あいつ、仕事は完璧だからな。』


『はい。
だから、今、桐谷さん以外の
補佐は考えられないです。』






確かにそうだ。

やっぱり、宮野に協力させるか?






『俺も、そう思ってる。
桐谷は営業に残す。俺は譲らない。
宮野。お前も協力してくれるか?』


『もちろんです。
協力しますよ、喜んで。』


『そうか、悪いな。
じゃあ、近々夏木部長に時間もらうから
一緒に説得するぞ。』


『はい。任せて下さい。』


『悪いな。
俺は、折れるつもりはないが、
夏木部長もそう簡単には折れないぞ。』


『はい。やりましょう。』






宮野に話して良かった。

こいつは、若いが仕事は評価はできる。

営業1課の次期エースだ。

いずみの補佐も効いているが、

それより実力がある。

こいつを育ててみたいと思っている。






その過程で、

いずみの補佐は不可欠だろう。






『課長。俺、営業だと思って
ガチでいきますよ。』

『ああ。俺も本気でいくから。』






宮野と結束して、

あの部長を説得してやる。

今週が勝負だな。

どれだけ時間があっても足りない。







俺と宮野は、オフィスに戻った。

俺はすぐにデスクで仕事を始めた。

宮野は、いずみと話している。

時折、いずみの笑い声も聞こえている。







いずみの笑い声が俺を癒した。

あいつが笑っているだけで安心する。







それから、

仕事を鬼のように片付け、

午後になり、東亜へ商談に行く。






東亜には、いずみも同行する。

今日は、社用車を使った。






いずみと二人、社用車の中。

助手席のいずみが俺の方に顔を向ける。





『将生。』





運転しながら、チラッといずみを見たら

いつもの笑顔で俺を見ていた。






『ん?なんだ?』

『今日は遅くなる?』

『あー、どうかな?多分な。
マーケの仕事もあるしな。』






いずみは、一瞬黙った感じがしたが、

すぐに笑って





『そっか。そうだったね。』




と、言った。

寂しそうに感じたのは気のせいか?





『なんだ?いずみ。
今日も一緒に過ごしたかったか?』

『えっ?べっ、別に?』

『へぇ、そうかぁ?』

『将生、ウザい。』

『クックッ。図星だろ?』






当たりだ。

素直じゃねーな。

今日はわかりやすい。

まあ、俺も一緒に居たいと思ってる。





『ごめんな、いずみ。
今週はずっと遅くなるな。
金曜のもあるしな。』


『うん。』





今週は、我慢だ。

それでも、会社で顔は見れる。





………。





しばらく静かな車内。

俺の頭の中は、

あの企画の部長をどうやって落とすか、

それを考えていた。







が、

隣からチラチラ送られてくる視線。

そのうち、チラチラどころか、

露骨にこっちを見るいずみ。

ガン見してねーか?





『そんなに見るな。』


『……見てた?よね。ハハっ。』


『まあ、お前が見惚れてる男は、
お前のもんだけどな。』


『はいはい。
あんた、なんかムカつく。』


『ククっ。
そんなヤツに惚れてんだろーが。』






俺はお前のもんだよ。

お前しか見えてないから。






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