甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
あまりにも予想外の言葉を
聞いたもんだから
直ぐに聞き返すことも出来なくて
俺が戸惑っていいるうちに
そいつは走って帰っていった。


残された俺は漸くやって来たトキさんに
聞いてみた。


「なぁ、トキさん。
ついさっきまで
一緒に遊んでたやつがトキさんのこと見て
お母さんって呼んだんだけどなんで?」


って。


俺が深く考えもせず
思ったままを言うとトキさんは


「ついさっきまで一緒にいた子…………?
ーーーそれはどんな子ですか?」


俺はみたまんまの印象を
トキさんに言ってやった。
トキさんは黙って聞くと
一瞬、辛そうな顔したけど


「坊っちゃん、さぁ、帰りましょう。
今日は奥さまがお夕飯に
坊っちゃんの好きなオムライスを
作るっておっしゃってましたよ。
良かったですね。」


そう言うと俺の手を引いて
家へと帰り始めた。


黙ったまま俺の手を引くその力は
いつもよりどこか強くて
今思えば、まるで何かから
逃げるかのようだった。


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