甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「ふうん、
何だかんだ言って和菓子王子と
仲良くやってるんじゃない。」


と、
香澄。


月曜日の社食は混んでいて
私達はトレイを持ちながら
日替わりランチの列に
並んでいた。


「わ、和菓子王子って……。
仲は良くないわよ。
それに全然王子様じゃないわよ、
あんな口の悪い意地悪な人……。」


「だけど、結局
言われるまま先週の昼休み、
ずっと、櫻やに通ってた癖に。」


「だって、それはーーー」


「甘いものが好きなだけで、
サトルさんに会いに言ってた訳じゃ
ないでしょ?胡桃ちゃん?」


「っ坂下さんっ!」


私の隣にいつの間にか
坂下さんが並んでいた。


「あらっ、私お邪魔ですよねぇ。」


と、
列から出ようとする香澄にーーー


「ああ、春川さん、大丈夫。
ごめんね、気を使わせて。
だけど僕これから外出で
実はもう食事済んでるんだよ。
ありがとうね。」


と、
これぞ王子様と言わんばかりの
笑顔を惜しみもなく振り撒く坂下さん。


「そうなんですかぁ。
お忙しいですね、相変わらず。」


「お陰様でね。
と言うわけで胡桃ちゃん、
今週末空けといてよ。ねっ?」


と、
ごくごく、自然にウインクを残し
颯爽と社食を後にした。


うっ……/////////


か、カッコいい……。


「ちょっと、
何ボケぇっとしてんのよ。
早く小鉢取りなさいよ。」


香澄に言われて漸く順番が来て、
日替わりランチのメニューの
お皿を順にトレイに乗せていった。











「ふぅ、お腹いっぱいだね。」


「って、あんたまだ食べんの?」


込み合う社食でさっさと食事を
済ませた後、香澄と休憩室に
やって来た。


休憩室で早速
今朝、会社の隣にあるコンビニで
買っておいた、フルーツケーキに
かぶり付く私に呆れた顔で香澄が言う。


「だって、これは別だよ。」


「別って……
っで、なに、今週は櫻やには
行かないの?」


「……そうなんだよねぇ……。」


あの例のややこしい取り決めの一つに
坂下さんの週には決して
櫻やに行ってはいけないことに
なっている。
どうしてもいく場合は
坂下さん同伴という、なんとも
面倒な話なのだ。


香澄にその辺りの事を
詳しく説明するとーーー


「一夫多妻の国も
こんなこんな感じなのかしらねぇ……」


と、
呑気な事を言いながら
カフェラテを飲んでいた。


もう……他人事なんだから……。




















< 33 / 192 >

この作品をシェア

pagetop