甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「悪かったな……取り乱して……。」


あの後、
黒髪美人ーーー
吉澤亮子(よしざわ りょうこ)さんは
帰っていった。


何となく気まずくて
一人でも帰れると言ったのに
サトルさんが送ってくれるって言うから
私は今、サトルさんの車の助手席に
座っている。


けれどーーー


サトルさんは一言、言ったきり
黙っていてやっぱり
いつものサトルさんではない。
けど運転はいつも通りの安全運転だ。


とてもさっき
大きな声で怒っていた様には
思えないくらい、
静かにハンドルを握っていた。


ただ、
運転するときは必ず眼鏡を
かけているのに、
今は掛けていない……。


やっぱり、動揺しているのかな……。
なんて事を考えながら顔をまじまじと
見ていると。


「何だよ、さっきからじっと見つめて。
やっと俺に本気で惚れたか?」


信号待ちになり、
私の方を向いてニヤリと笑うサトルさん
だけどーーー


どこか、無理して
笑っているようにも見えるのは
気のせい?


「大丈夫……、ですか?」


今の私に言える精一杯の一言。


「ああ、俺はいつだって
大丈夫だけど。
何なら、今すぐにでも
お前を押し倒してーーーー」
「サトルさんっ、ごまかさないでください。」


茶化すサトルさんの言葉に
被せるように言った。




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