甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「なんだよ、おっかねぇ顔してさ。
お前には似合わねぇぞ。」


そう言うと、
また私の頭をぐしゃぐしゃとした。
けれど、さっきあの場所で
されたのとは違って
どこかいつもより
遠慮ぎみに感じたのは
私が考えすぎなだけだろうか。


信号が赤から青に変わると
サトルさんはスッと前を向いて
また、ゆっくりと車を走らせた。


そこからは本当に一言も
会話することはなかった。













「ほら、部屋に入るまで
ここで見ててやるから、行けよ。」


私の住むマンションの下で
車を止めるとサトルさんがそう言った。


「はい……ありがとうございました。
でも、良いですよ。
さすがに大丈夫ですし。
どうぞ、車出してください。」


「はぁ?
お前には遠慮なんて、似合わねぇっつーの。
ほら、行けって。行かねぇなら
このままホテルでも、行くか?」


「はあ?何言ってんですかっ!
行くわけないでしょっ!」


私はバタンと助手席のドアを閉めると
マンションのエントランスへと
向かった。


そこで一度、振り向いたら
サトルさんは手のひらを
ヒラヒラとさせて
早く行けと言わんばかりだった。


私は軽く頭を下げると
そのまま、マンションの中へと
入っていった。




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