恋するイフリート
ニコニコと笑顔を崩さない意味深なカリフに、
不信感たっぷりの視線を投げつけていたイフリートだったが
諦めたように、一度大きな溜息を吐くと
「パンっ!!」
と己の腹の前で両手を強く打ち付けた…。
そして怪し気に呟く…。
「世界に散り散りになっている精霊達よ…。
我が声を聞け!!
出てよっ!!デーツっ!!」
イフリートの打ち付けたままの掌から、キラキラと輝く虹色の光が飛び出すっ!!
「おっおおお~~っ!!」
その幻想的な光景に、すっかり洗脳された親子は大きな歓声を漏らした。
虹色の光は、葵の目の前で、グルグルと激しく円を描き出したかと思うと、
「カッ!!!」
と、まばゆい程の強い輝きを放った。
あまりの輝きの強さに、一同はたまらず、目を瞑る。
そして…
強い光の衝撃を受けた瞳をこすりながら、再び瞳を開いた先にあったのは……
「……何これ…?」
と、葵。
「これって、もしかして、葵ちゃんの言った、デーツじゃないのぉ?」
と、美里。
「…ま…魔力が、俺の魔力が戻ったぁーーーっ!!」
と、イフリート。
三者三様の様々な反応を見せながら、一同の目の前にあったのは、
こげ茶色の大粒のドライフルーツが山盛りに積み重なっていた。
「…これって食べれるの…?」
葵は怪訝な表情で呟く。
当然だろう。
普通、こんな事は有り得ないのだから、それぐらいの疑問ぐらいは持って欲しいし、
むしろ、
『気になるのはそこっ!?』
という思いに駆られるが、まぁ、この親子なら…
仕方のない事なのだろう。
葵の呟きに、カリフが笑顔で答える。
「もちろんですよ、葵さん!
イフリートは、あぁ見えて、大魔神なんですよ!
彼の魔法は一流です!
どうぞ、食べてごらんなさい」
満面の笑でこの出処の妖しい、こげ茶色の物体を今すぐ食すように進めるカリフに、
当然、拒否権など持ち合わせていない葵は、内心嫌々ながらも、それを断る事は出来ない…。
葵は、怪しみながらも、黒光りする、こげ茶色の物体を手に取った…。
その様子を眺めるカリフの笑顔は依然として変わらない…。