チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「いつも…啓介は譲ってくれたんだよな。口では憎まれ口叩きながらも、いつもさ」
マモルの顔が曇ったのは、沈んでいく夕日のせい?
「…なのに俺、咲羅を幸せにしてやれなかった」
マモルの呟きが、あたしの心に刺さる。辛くて、少しだけ視線を反らした。
「…視力を無くすって言われたのは、一年前だった。丁度その頃、咲羅が上京を決めて…言えなかったんだ。言えば咲羅は、きっと上京を諦める。諦めて、俺の側に居るって言う。だから…別れようって、思った」
それでも好きだったんでしょ?、言いかけて止めた。ただそっと、マモルの手にあたしのそれを重ねて。
「チェリに間違えて電話した時…少しだけ揺らいだんだ。女々しいよな。でもその頃もう、ほとんど見えてなくて…咲羅の残してくれたメモを、見間違えたんだよね」
だから、チェリに繋がった。その言葉にどこか安心感を覚えて、少し罪悪感も覚えた。