チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
こんなにマモルに頼りきってるくせに、あたしは彼に佐倉さんの事を言えずにいた。
好きな人がいるということは初めに宣言したからきっと知ってるし、あえて二度も言うこともないと思ってる。
でも、佐倉さんの事を言えないのは、それが理由なんかじゃなかった。
幻滅されるのが、怖かった。
あたしと佐倉さんの関係は、世間一般でいう不倫で。それは決して許されるものじゃない。
マモルに言ったらどう思うだろう。
あたしがマモルだったら、きっと幻滅する。
だからあたしは言えずにいるんだ。
今マモルを失うことは、あたしにとって結構大きい。
恋とか友情とか、そういうのとはまた少し違う気がする。
マモルは、あたしの安定剤だった。
マモルの声を聞くと、落ち着く。
話を聞いてもらえると、落ち着く。
電話だけの関係だからかな、あたしは結構、彼に依存してる気がする。
もちろん、重いと思われない様にある程度の間隔は空けてるけど。
とにかく今のあたしには、マモルは必要な人だった。
恋人とか友人とかより、その言葉が一番しっくりとくる。
そんな関係だった。あたしと、マモルは。