チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
音が途切れ、カタッという音と共に、電話口にマモルが出たことがわかる。
何も言わないマモル。あたしが先に口を開いた。
「…マモル」
『ん?』
「ごめん、前言撤回させて」
バカみたいに真剣に、あたしは言った。
「凄い…マモル、ホントに凄いね。クラッシックなんか全然わかんないけど、でも…どの音楽とも違うよ。マモルの音楽って、すぐにわかる」
一気に言うあたしに、向こう側でマモルは明らかに戸惑っていた。照れてる、と言う方が正しいのだろうか。
『…あんまおだてるなよ』
「だってホントに思ったんだもん!ホントに…ホントに、感動したよ。優しい…優しい、音楽だった」
何て曲?と聞いたが、マモルは答えない。と、いうより、聞こえてない気がする。一瞬眉間にしわを寄せる。
「マモル?」
『え、あ、ごめん。何?』
「どうしたの?」
『いや、あんまチェリが誉めるからさ。ちょっと照れただけ』
明らかに戸惑いながら話すマモル。あたし何か、変なこと言ったっけ?
『で、何だっけ』
「あ、うん。曲の題名」
『あぁ…ショパンの、ノクターンだよ』
ショパンかぁ、と呟く。名前だけは知ってたし、曲もどこかで聞き覚えがある。
多分、有名な曲なんだろう。