チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「覚えとくね。ショパンのノクターン」

満足そうにあたしは言った。マモルも笑って、『覚えといて』と呟く。

『明日、頑張ってね』
「あ、うん!まぁ明日は説明だけなんだけどね」
『あ、そっか』
「でもマモルの音楽で落ち着いた。ありがとね」
『…どういたしまして』

少しはにかみながら言うマモルに、あたしは少しだけ笑った。

今日、マモルの音楽が聞けてよかった。

脳裏に染み込んだ優しい旋律。

何度でも繰り返してしまう。

『じゃあ、そろそろ切るね』
「うん!今日はありがとう」
『どういたしまして。じゃあ、お休み』
「うん、お休み」

電話を切って、ほぅっと息を吐いた。

何だか凄く、マモルに近付けた気がする。

小さく微笑んで、早速明日、ショパンのCDを探しに行こうと思った。


…その時のあたしは、まだ気付いてなかった。

自分が思う以上に、マモルに近付いていたことに。

もっと、近付こうとしていることにも。




『優しい…優しい、音楽だった』

『優しい音楽ね。護流の音楽は』

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