【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜

いきなり腕を掴まれ

カラダが“ビクッ”と震えた。

まさか、満君ではないと思いながらも

恐怖心がカラダを伝っていく。

しかし

「…野村さん?
野村さんじゃないのか!?」

私の名前を口にする

どことなく聞き覚えのある声に

あれ?もしかして…。と

恐る恐る掴まれた方向に視線を向けた。

その人は…やっぱり思った通り

「……氷室部長?」

黒のコートにスーツ姿。

右手に少し大きめのビジネスバッグと

向こうにあるスーパーで

何か買い物をしたのか

ビニール袋を持って

私を覗き込むように立っている

氷室部長がいた。

「…氷室部長。」

もう一度名前を呟いた私に

「…やっぱり、野村さんだったか。
どうしたんだ!?
こんな時間にこんな所を歩いて…。
君、確か…自宅の最寄り駅は
ここではないはずだろ…?」

と、言いながら彼は

私の顔をじっくり見てハッとした。

無理もないと思う。

鏡を見ていないけど

私の顔は溢れる涙でぐちゃぐちゃで

メイクだって、取れて流れて

目だって、いかにも泣き腫らしたって

バレバレなはず。

急に恥ずかしくなり視線を逸らした。

部長は私の腕を離すと

「…どうしたんだ?その顔は…。
泣いてるじゃないか!?
しかも…そのバッグも
仕事帰りにしては大き過ぎる…。
どうしたんだ!?何があったんだ!?」

そう言いながら

私をさらに覗き込むように見下ろした。


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