【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
…ああ。

もうこれできちんと終わったんだ。

あの時

最初に別れようと言ったのは私。

だって…もうこれ以上

裏切られたくなかったから。

未来が音をたてて崩れていったから。

満君は豊島さんを選んだ。

私は満君との将来を…結婚を

考えていたのに、満君は私より

豊島さんとの結婚を選んだ。

私達って何だったんだろうね。

やっぱり傷つくね…。

豊島さんもいる前で…。

この間あんなに泣いたのに

私の瞳から再び涙が零れた。

黙って見ていた豊島さんが口を開いた。

「…野村さん、本当にごめんなさい。
私…私は…本当は笠置主任の事が
ずっと好きだったんです。
あなたに嘘をつきました。
いけないってわかってたけど
笠置さんと付き合ってたあなたが
憎くて、嫉妬して、奪いたくて…。
会社に出向を直訴して
経理部長も言いくるめて
経理部に置いて貰って
笠置さんに近づきました。
正直、別れて欲しかったんです。」

…ひどい…憎いなんて。

豊島さん…故意にそんな事をしたの?

そこまでして、満君を奪いたかった?

そんなに私が邪魔だった?

「…うぅっ……っく。」

悲しくて悔しくて涙が止まらない。

満君と育て上げてきた愛の花々は

もう跡形もなくボロボロで

…無残にも引きちぎられた。

その時

「……羽美花。」

誰かが私の名前を呼んだ。

私のカラダがピクッと震えた。

「…ごめんな。羽美花。」

謝罪と共に私を呼ぶ優しい声。

満君じゃない声の主。

「……氷室…部長。」

ボソッと呟いた私の声を

ちゃんと拾ってくれたのか

「…正解。」の言葉と共に

頭に優しい温もりが下りてきた。


「…えっ…!?氷室部長!?」

満君の驚く声と

「…あっ…。嘘っ!!」

豊島さんが口を開いて驚く声。


そんな2人の驚く声に

私は顔をあげて横を向いた。


「…羽美花…本当にごめんな。
辛かったな…1人にさせてごめん。
…良く頑張ったな。
もう大丈夫だ…俺がいるからな。」

「…部長。」

私の頭を撫でながら

優しく微笑む氷室部長の姿があった。




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