【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
さっきとは違う

優しい顔をしながら

私を見つめながら涙を拭いてくれる

氷室部長が優しくて

私を本気で愛してくれて

救ってくれるような気がした。

拭いてくれるのに溢れる涙の中で

「…部長。
私もう…ここにいたくない。」

と、部長にだけ聞こえる声で

ポツリと呟いた。

部長はその声を拾うと

右手で私の左手を握ると

「…羽美花…本当に辛かったな。
傷ついたな…。
でも、こんなヤツと結婚しなくて
良かったと、いつか思える日が来る。
君の両親や兄貴もきっと同じだ。
…だから、コイツらの事は
俺に任せとけ…いいな?」

有無を言わせない

鋭さを秘めたその声に

私は戸惑いながらコクンと頷くと

「…いいこだ。」

と口角をあげて、私の頭を撫でると

「…じゃあ、そう言う事だ。
これ以上ここにいても
羽美花も辛いし、時間の無駄だな…。
…羽美花、帰るぞ。」

そう言って氷室部長は

握ったままの私の手を引いて

向きを変えようとした。

その時

「…ちょっと待てよ。」

ずっと黙っていた満君が

私達を呼び止めた。

「…さっきから何だよ。
氷室部長と羽美花は
何で一緒にいるんだよ?
しかも部長は
羽美花の事を呼び捨てにしてるし
どう言う事だ?…羽美花。」

戸惑いながらも、少し怒ったような

私に『説明しろ』と言いたげな

満君の表情とその声に

「…そんな事を聞いてどうする?
豊島を選んだお前には関係だろ?」

振り返った部長は満君を睨みつけた。

「…関係なくないです。
俺は羽美花と付き合ってましたから
聞きたいし、知る権利はあります。」

満君も負けじと反論した。

「…そうか。」

部長は再び満君を睨みつけると

「…そんなに知りたきゃ
俺がいくらでも教えてやるよ。
これからはお前の代わりに俺が
彼女の彼氏に昇格する。
もう、彼女も自由の身だ。
俺は彼女のずっと恩人扱いだった。
だけど、彼女の男になる為に
これから口説き落とす。
呼び捨てにしたのは
予行演習とでも言っておこうかな。」

「…はっ!?」

その言葉に満君が驚いた。

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