【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
ようやく唇が離れると

咲輝翔さんは無言でベッドから下りて

ドアをバタンと閉めて行ってしまった。

シンと静まり返った寝室。

暖房もいつの間にか消されて

急に辺りが寒々と感じ始めた。

再び涙が頬を伝った。

どうして、疑ったんだろう?

私が馬鹿だった。

考えてみればわかる事だ。

彼の全てを知ってるワケじゃないけど

恩人だった人が元カノや元奥さんの

所持品を私に着せるワケないし

会社でも神経質そうなイメージだから

そんな事をするはずないって

気づくべきだったのに…傷つけた。

きっと怒ってる…だから…。

どうすれば許して貰えるのかな?
俯いてポロリと涙を流していると

「…何でまた泣いてる?」

カットソーにパーカー

スエットズボンに着替えた

彼が再び寝室に入ってきた。

「…ごめんなさい!!」

すぐに謝った私に

「…別にもういい。
アイツらの事があったから
わからなくもない。
でもな…これだけは言っとく。
俺はそんな無神経な事はしない。」

と、彼は私を見下ろしながら言った。

「…避妊具を持ってたのは?」

再び怒られそうになるのを覚悟して

私は聞いてみると

一瞬、はっ!?って顔をした後

「…ああ、アレか。
アレは、“タカ”の双子の弟の“ツグ”から
『いつか好きな子が出来たら使えよ。』って、随分前にお節介で渡された。
…今になれば間に合ったけどな。」

と、彼は苦笑いした。

「…“タカ”?“ツグ”?…誰ですか?」

涙もいつの間にか止まった私は

聞き覚えのない名前に首を傾げた。

「…“タカ”は企画デザインの藤堂貴晶。
“ツグ”はその双子の弟の貴継。
藤堂家と氷室家は父親同士が親友で
昔から家族ぐるみの付き合いがある。
ちなみに、貴継は俺の妹の彼氏だ。」

「…えっ!?そうなんですか?」

意外な話を聞いて驚く私に

「…まあ、今そんな話は別にいい。
それより…腹減っただろ?
シャワーの前にメシにしよう。
簡単なの用意したからこっちに来い。」

そう言って、手を差し出した。

…良かった。もう、怒ってない。

優しい瞳で私を見てくれる。

「…はい。」

私は差し出された手に

そっと自分の手を重ねた。













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