【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
俺はその女性を見て“ドキッ”とした。

おそらく、この夏の暑さで

気分が悪くなって立ちくらみか何かで

動けなかったのだろう…。

真っ青な顔をしていたが

不謹慎ながら…美しかった。

柔らかな雰囲気と優し気な瞳。

本当に美しいと思った。


“何を考えてるんだ”と冷静になり

どうしたのか、彼女に尋ねても

やっぱりしんどいのか

緊張しているのかで

返答になっていない。

すると、彼女の代わりに

もう一人の女性が説明してくれた。

彼女達は短大生で

今から企業説明と採用試験の説明会に

向かうところだが

彼女が改札口出た途端に

立ちくらみをおこしたとの事。

歩けそうにない彼女を

置いていけないから

タクシーで行こうかと

提案していたとの事だった。


どこの会社で、何時からだ?と

俺は女子学生達に聞き返すと

ようやく

「…14時に…Sコーポレーション。」

と、彼女がそう呟いた。

俺は腕時計をチラリと見た。

時間は13:30になろうとしている。

…今ならまだ間に合う。

俺は彼女達に

ここで待つように言い残すと

駐車場へ駆け出していった。

そして、ロータリーに車を停め

彼女を抱きかかえて後部座席に乗せ

もう一人の女子学生も乗せて

俺は車を発進させた。


この時、一緒にいた女子学生が

後にT社の係長の菊田英慈と結婚する

旧姓:山谷花菜子で

美しいと思った女子学生こそが

俺が後に愛してやまない事になる

……野村羽美花だった。




< 160 / 320 >

この作品をシェア

pagetop