【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
「…氷室部長。」

再度俺の名前を呟いた彼女。

こんな夜遅い時間に

こんな所を歩いているなんて。

自宅の最寄り駅は

ここではないはずだろ?

彼女の顔をじっくり見て

“ハッ”と再び俺は目を見開いた。

会社でいつも見ている顔とは違う。

遠くからではわかりにくかったが

彼女の顔は涙でグチャグチャ。

虚ろなその表情と

瞼も頬も鼻も泣き腫らしたのか

寒さの為か赤くなっていた。

虚ろながらも恥ずかしいのか

彼女は俺から視線を逸らした。

…何だ?どうしたんだ?


俺は彼女の腕を離すと

なぜ、泣いているのか?

仕事帰りにしては大き過ぎる

その重そうなバッグを

なぜ持っているのか理由を尋ねた。


しかし、彼女は口を開こうとはしない。

彼女の瞳から涙が溢れてきている。

しかし、何があったのか

何度も尋ねても黙ったまま答えない。

「……なぜ、言わない?
どうして……。」

と、さらに返答を求めようとした時

俺の中である予感が生まれた。

…まさか。

「…まさか….。笠置か?」

と、俺はアイツの名前を呟いた後

荷物を持っていない左手で

彼女の肩に手を置いて

確認しながら返答を求めた。

何か言ってくれ…。

頼むから…黙るなよ。

笠置と何かあったから

そんなに泣いてたんだろ?

こんな場所まで来て…。


すると、観念したのか

彼女はコクンと頷いた。



何て事だ…。

やっぱりそうだったのか…。



俺は彼女の頭を優しく撫でた。

顔を上げた彼女に優しく微笑んだ。

彼女の体は震えている。

寒いのもあるだろうけど

笠置との間に

相当のダメージを受けるような

何かがあったに違いない。


多分その理由も…大概予想がつく。

…すっかり目を腫らして。

こんな最寄り駅でもない

こんな逆の場所まで来るほどだから

相当の動揺と混乱を

抱えていたに違いない…。

彼女の美しい顔が

悲しみに歪んでいる。







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