わたしから、プロポーズ
「ここにピアスがあるって事はつまり•••」
それ以上は言葉にするのも嫌で、頭の中で打ち消す。
瞬爾の私への態度から、別れて距離を置いた事は間違いではないと思ったのに。
もしかして、それは私を吹っ切れたからか?
だから、余裕を持って接する事が出来ているのか?
打ち消したはずの疑問が、頭の中を駆け巡る。
すると、廊下から瞬爾の声が聞こえてきたのだった。
「莉緒?どうした?大丈夫か?」
なかなか戻ってこないからか、瞬爾がこちらへやって来る足音が聞こえる。
「あっ、大丈夫よ!」
慌ててパソコンを抱えると、ピアスを残したままベッドルームを飛び出した。
瞬爾があのピアスに気付くのはいつだろう。
「良かった。なかなか戻って来ないから、倒れてるのかと思ったよ」
笑顔を浮かべる瞬爾に、私も笑顔を返す。
だけど、それがぎこちないものだと自分でも気付いていた。
リビングへ戻りパソコンを立ち上げると、牛島さんに言われた通りに店を検索する。
すると、思った以上の件数の多さに圧倒されたのだった。
「ため息が大きいな。そんなに多かったか?」
どうやらため息をついていたらしく、瞬爾に笑われてしまった。
「うん。かなり•••。この調子じゃ時間がかかりそう」
「別に、今夜だけで終わらせる必要はないだろ?また明日もすればいいじゃないか」
瞬爾はそう言うけれど、さすがに何度もここへ来るわけにはいかない。
それに、ここには他の女性も来ている様なのだから。
返事をせず渋る私に気付いたのか、瞬爾はそれ以上は何も言わなかった。
「莉緒、腹減ってるだろ?デリバリー取るよ。何か食べよう」
「ありがと•••」
まるで空気を変える様に、瞬爾は手際良く店に電話をし始めた。
私の好みを誰よりも知っている人だから、何も聞かずに頼んでくれる。
そんな瞬爾を愛おしく思えば思うほど、ベッドルームのピアスが気にかかって仕方なかった。