わたしから、プロポーズ


「終わったー!」

デリバリーでやって来たピザも食べ終わり、ひたすら続けていた店の検索が無事に終わった時には、すでに時刻は0時を過ぎていた。

「 本当に一日で終わらせたんだな」

「うん。何度もお邪魔するわけにはいかないから。それより、遅くまでごめんね」

「いいよ。そんな事は。莉緒、これからどうする?もう帰るか?」

『もう帰るか』なんて質問は、私にどういう選択をさせたくて言っているのだろう。
帰らない選択をしたら、一体どうなるのだろうか。

「うん、もちろん帰る。遅くなっちゃったから」

そう答えると、瞬爾は小さく笑顔を浮かべた。

「そうだよな。ただでさえ実家だもんな。遅くなるわけにはいかないか」

「うん。瞬爾、今夜はありがとう」

プリントアウトした紙をカバンへ仕舞い込むと、帰り支度を急いだ。
あのピアスの持ち主が美咲さんだったとして、美咲さんはここへ泊まったのだろうか。
それとも、こんな風に帰っていったのだろうか。

「ねえ、瞬爾」

迷ったけど、やっぱり聞いておこう。
こんなチャンスは、きっともう無いだろうから。

「ん?何?」

「瞬爾は、その•••。他に好きな人が出来た?」

「え?」

思いがけない質問だったのだろう。
瞬爾は言葉の意味が理解しきれない様子で、私を見つめたままだ。
ピアスの話をすればいいものを、核心を突く勇気はない。
だけど、好きな人がいるか聞いてしまったのは、覚悟をしたかったからなのか。
それとも、今ならまだ瞬爾を奪い返せると思ったからなのか。
相変わらず、自分の気持ちが分からない。

「他に好きな人か。何で、そんな事を聞くんだ?それにもし、俺が『いるよ』って答えたら、莉緒はどうするんだよ」

「えっ?私?」

もし、いるよって言われたら•••?
それは、きっともう一度奪い返すって答える。
だけど、今それを言ってしまっては、中途半端な告白になってしまう。
それはダメだ。

決めたのだから。
ケジメをつけて、私の本当の気持ちを伝えると。
それでなければ、瞬爾を傷つけた意味も無くなってしまう。

黙ったままの私に、瞬爾は小さく微笑んだ。

「ごめん。意地悪な質問をしたな。送っていくよ。帰ろう」
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