わたしから、プロポーズ


結局、質問の答えは聞きそびれてしまった。
隣でハンドルを握る瞬爾は、怖い顔のまま何も言わない。
よほど私の質問が気に障ったのだろうか。
会話も無く重苦しい空気のまま、夜中で車が少なかったからか、昼間より早く家へ着いたのだった。

「本当にありがとう。おやすみ、瞬爾」

「ああ。おやすみ」

まるで愛想のない声を聞きながら車を降りる。
窓越しに見える瞬爾の顔には、少しも笑顔がなかった。

やっぱり、怒ってる•••。

突っ込んだ質問をしたのが、そんなに気に障ったのだろうか。
それでも車を見送ろうと、その場で発進するのを待っていると助手席の窓が開いた。

「もう遅いんだから、家に入れよ」

「あ、うん」

そう言われて急いで玄関扉を開けると、それをすぐに閉めた。
すると、瞬爾の車が発進する音が聞こえたのだった。
ゆっくりとドアを開け、隙間から覗くと遠くに瞬爾の車が見える。
それはすぐに見えなくなったけれど、瞬爾の優しさだけは胸に残っていた。

「あのピアス、何だったんだろう」

疑惑を持ちながらも、瞬爾の行動から信じられない気持ちも本当だ。
だって、今も気遣ってくれたから。
私に家に入れと言った瞬爾からは、優しさしか感じなかった。

だから、ピアスの真実を知るのは、自分の気持ちを伝える時にしよう。
その時には、何もかもが分かるはず。

「おやすみ、瞬爾」

ドアをそっと閉め そして部屋へ上がったのだった。
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