わたしから、プロポーズ
「頭が痛い•••」
コメカミに鈍い痛みを覚え、目が覚めると実家の自分の部屋にいた。
それも、ちゃんとベッドで寝ていたらしい。
外はすっかり陽が高くなり、すでに昼前だ。
「休みで良かった」
ドアを開け、リビングへ降りる。
服が着替えられていないところを見ると、帰ってきてそのまま寝た様だ。
それにしても、どうやって帰ってきたのだろう。
途中からの記憶が全くないのだ。
覚えているのは、瞬爾とキスをした幸せな夢だけ。
「お母さん、おはよう」
コメカミを抑えながらリビングへ行くと、呆れた顔のお母さんにため息をつかれた。
「莉緒ってば、二日酔いなんてみっともない。それと、ちゃんと瞬爾くんにお礼は言った?」
「瞬爾に?何で?」
瞬爾の名前が出てくると、心臓が飛び跳ねそうだ。
「何でって、ゆうべ酔っ払ってる莉緒を、連れて帰ってきてくれたじゃない。覚えてないの?」
「ええ!?瞬爾が?」
私を連れて帰った?
「そうよ。瞬爾くんが、あなたを抱えてベッドまで運んでくれたんだから。恥ずかしいったらないわよ。ちゃんとお礼を言いなさいよ?」
呆然とする私に、お母さんは水が入ったグラスを手渡すと、そう言い残してキッチンへ消えたのだった。
まさか、本当に瞬爾と一緒だったなんて。
じゃあ、お店に迎えに来てくれたのは、夢じゃなかったって事?
「ううん。それだけじゃない」
思わず口元を覆う。
まさか、キスも本当にしたかもしれないって事?
「どうしよう•••。分からない」
どこまでが夢で現実なのか。
そして、なぜ瞬爾は私を迎えに来てくれたのだろう。
何もかもが分からない事だらけの中で、一つ分かる事がある。
それは、瞬爾が来てくれて嬉しかったという事。
やっぱり簡単には諦められない想いだと、改めて分かったのだった。