わたしから、プロポーズ


「指輪…?」

突然、何を言い出すかと思えば、指輪をしてこいとは…。

「そうだよ、指輪。やっぱり、結納はさっさと済ませとくべきだったな」

「何なのよ、その言い方は。さっさと済ませとくべきだったって、どういう意味?」

いくらなんでも酷すぎる。

大事な結納を、“さっさと”呼ばわりとは。

瞬爾にとっては、形式的なものに過ぎないのか。

すると、冷ややかな目をしたまま、私の左手を強引に取った。

「俺の中では、結納が終わるまでは婚約は成立しないって決めてたんだよ。それは男としてのケジメの意味で。だけど、実際はどこから“婚約”って呼ぶか知ってるか?」

「し、知らない」

言いようのない圧力を感じて、思わず引けてしまう。

「お互いが結婚の約束をしてからだよ。だから、俺がプロポーズをして、莉緒が返事をくれた時。だから、俺たちはもう婚約者同士なんだ」

相変わらず左手を持ったまま、瞬爾はさらに薬指を軽く突いた。

「だから、諦めて指輪をはめておけ。どうせみんな、俺たちを婚約者として見るんだからさ」

とても、今までのイメージの瞬爾とは違う。

こんな冷たい言い方をする人だとは思わなかった。

「瞬爾って、そんな人だったのね。強引で、私を束縛しようとして。見損なった」

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