わたしから、プロポーズ
ありったけの軽蔑の意味を込めて、私は瞬爾にそう言った。
だけど、瞬爾には効いていないのか、冷たい視線を崩していない。
「“見損なった”か…。じゃあ、莉緒は俺の何を見てたんだよ?こっちが聞きたい」
まるで捨てぜりふを吐くと、瞬爾は部屋を出て行った。
一人残された会議室で呆然としながら今のやり取りを思い返していると、心が全て見透かされている様な気がする。
瞬爾は、ヒロくんの事を一番に疑っているに違いない。
だから、ヒロくんの話を聞いて突然、結婚の話をしたのだろう。
もちろん、私が悪い事くらいは分かっているけれど、強引なやり方がどうしても許せなかった。
まるで、私を囲い込むかのような行動に、瞬爾と付き合って初めて嫌悪感を抱いた。
もっと、余裕を持って欲しいのに。
瞬爾には、いつだって大人の余裕を持っていて欲しい。
そんな身勝手な考えを持ちながら、会議室を出てオフィスへと戻った。
だけど、瞬爾とは目を合わす事など出来なくて、周りの「おめでとう」の言葉には、愛想笑いを浮かべるしかなかったのだった。