イジワル同期の恋の手ほどき
結局、私たちが会社を出たのは十九時過ぎ。南街までは電車で十分かかる。
「おい、急ぐぞ。『川田屋』が閉まる」
改札を出て小走りに、デパ地下の食料品売場に駆け込んだ。
「まとめ買いしないのか?」
包装を待ちながら、宇佐原が振り向く。
「焙煎したての茶葉をパックしてもらうのがおいしいから」
「なるほどな」
いつも買う単位は百グラムと決めている。
支払いはやっぱり宇佐原がすると言って聞かない。
いつも飲ませてもらっているからと言うけれど、こういうところ、変に気を使うのだ。
初めの頃は押し問答したこともあったけれど、何回目かにあきらめた。
支払いする宇佐原がとてもうれしそうだったから。
「食事の前に、少し付き合ってくれ」
宇佐原の言葉に思わずかまえる。
「付き合うって、なにに?」
「ん? 買い物だけど?」
宇佐原が自分の買い物なんて珍しい。ちょっと、わくわくしながらついていくと、向かったのは、ショッピングモールにある和風雑貨のお店。