イジワル同期の恋の手ほどき

翌日、泉田さんに「昨日は無事に家に帰れた?」と聞かれて、私は少し慌てた。

なんで、泉田さんが知っているんだろ?

「はい、気づいたら朝で、どうやって帰ったかよく覚えてないんですけど」

「覚えてないの?」

泉田さんが驚いている。

ん? なんのこと?

「えっ、昨日なんかありました?」

泉田さんが寂しそうにふっと笑った。

「駅で会って、一緒に電車に乗ったんだけどな」

目をきょろきょろさせてなんとか、思い出そうとしても、公園の後の記憶がさっぱりない。

「私、なにか変なことしました?」

おそるおそる聞いてみる。
泉田さんに迷惑かけたとかならどうしようと、内心ドキドキしながら。

「そうだね、ちょっとびっくりしたかな」

泉田さんが意味深に微笑むから、ますます焦る。

「今夜、飲みにいかない?」

突然の誘いに、なんて返事すればいのかわからず、戸惑っていた。

「そのへんの話、聞きたいでしょ?」

耳もとでささやかれて、一瞬固まり、私は無言でうなずいた。
< 29 / 93 >

この作品をシェア

pagetop