滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
そんな裏の顔を知らず、奈緒子さんは純粋無垢で藤堂に目線を送る。
ーーそれがどうしても許せない。
奈緒子さんがいくら自分を変えてくれて、今でも大切な人だとどんなに謳っていても、
それを第三者で見つめる俺はどうしても納得できなかった。
浮気して捨てられて、
普通なら相手に嫌悪感すら抱くはずなのに、
それでも話しかけられて嬉しそうに笑う奈緒子さんが、
痛々しくて、切なくて、
何よりも悔しかったんだ。
「部長」
仕事する俺のデスクの前に立つ一人の女性。
パソコンからチラリと相手に目線を移すと、
私服姿の奈緒子さんが立っている。
「デザイン部からのイメージ図上がってきました。見てもらっていいですか?」