滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「…」
「…っ!」
無言のままジッと見つめる俺の眼差しに、
バツ悪そうにほんのり頬を赤らめた奈緒子さんが俺から目線を外す。
ーーんとに、奈緒子さんはわかりやすいなぁ。
言葉を出さなくてもこれだけ言いたいことがわかってしまう人間もそう簡単にはいないだろう。
「どうも」
笑いを堪えながら紙を受け取り目を通す俺。
もっと弄ってあげたいなとか虐めてやりたいななんて、
簡単に口に出せるほど部長と部下の関係性は甘くない。
ま、最悪また会議室に呼び出して好きなだけ奈緒子さんに触れることも出来るんだけどね。
「部長、どうぞ〜」
その時、別の女性社員がコーヒーを差し入れてくれた。
「ありがとう」
ニコッと爽やかな笑顔で返すと、
あれ?と女性が何かに気づいた。