滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
唇を指で軽くなぞりながら意味深に呟く俺に、
奈緒子さんは真っ赤な顔をして、失礼しますっ!とアタフタしながら席から離れて行った。
一度は自分の気持ちを伝えることを躊躇ったけど、
あの時、自分の気持ちを素直に伝えたことは後悔していない。
“貴方には関係ないじゃない!”
そんなこと言うなんて、
火に油を注ぐようなもんじゃないか。
関係なくないよ。
俺は奈緒子さんが好きで、
会いたいが為にこの場にいる。
短い時間の中で奈緒子さんの心をどれだけ俺に向けられることが出来るのか、
試してみたいんだよ、俺。
その為にはまず藤堂を忘れさせないと、何も始まらないじゃないか。
このままじゃ、スタートラインにすら立てないまま、
再び別れを迎えることになってしまう。